

シャーリーズ・セロン、グザヴィエ・ドランなど、今を煌めく映画人が大絶賛し、44の映画賞を受賞、124ものノミネートを獲得した話題作「燃ゆる女の肖像」。監督は本作でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞したフランスが誇る女性監督シアマ。
18世紀、フランスのブルターニュ地方の孤島。画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)はブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズ(アデル・エネル)の見合いのための肖像画を頼まれる。だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。
身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。キャンバスをはさんで見つめ合い、美しい島を共に散策し、音楽や文学について語り合ううちに、恋におちる二人。約束の5日後、肖像画はあと一筆で完成となるが、それは二人にとって別れを意味していた──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
女が多くの場で選択の自由を持たなかった18世紀。嫁入りを拒む娘と、肖像画を描くために雇われた女性画家の間に生まれる熱い想い。女性監督が描く同性愛の世界は物狂おしく、別れの悲しみが感動の揺さぶりをかける。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
女性画家が匿名での活動を強いられる時代を選択したことが、ドラマと人物に深みをもたらしている。男性をほとんど登場させることなく、苛酷な運命や抑圧、内なる解放を繊細かつ鮮烈に描き出す女性監督の演出力が光る。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
美しい! まずふたりの感情が。迷い、我慢、そして……気持ちの揺れ動きを静かに描いているのと、時代背景が上品なエロスをさらに拡大している。まるで絵そのもののようなスクリーンにプラスしてあの音楽。秋に観たい!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
10年に1作あるかないかの作品で魂が震えた。真に素晴らしい映画体験に没入した。簡潔ながら力強く、これだけエモーショナルな作品は本当に稀有! 強い確信が作り上げたのが分かる。今後の映画の指標になるだろう。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2020年12月4日号