室井佑月・作家
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イラスト/小田原ドラゴン
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 作家の室井佑月氏は、「Go To」キャンペーンに対する判断を批判する。

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 この原稿を書いている11月24日時点では、「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、『Go To トラベル』からの除外要請を表明していた大阪市と札幌市について、赤羽国土交通大臣は『正式に要請があれば最終判断する』と述べ、要請があれば除外する方向であることを明らかにしました」(24日、TBS NEWS)だってさ。

 この判断の遅さはなんだ? 結局、勤労感謝の日を含む3連休も、国のコロナ対策は個人任せのグズッとしたものになってしまった。もはや、今のこの国のコロナの状況は、人災だろう。

 赤羽大臣はちょっと前までコロナの感染拡大は「Go To トラベル」のせいではない、といっていた。いいや、そう北海道知事と話し合った、とかわざわざいっていたんだ。

 国民の健康や命を守ろうと思ったら、感染拡大の起因と思われることをひとつずつ潰していかないか? なにをもってGo Toのせいではないといったのか? 時すでに遅しではあるが、あたしは説明をしてほしい。

 つーか、前任者が突然職務を放り投げ、ちゃっかりその座に納まったといっても総理は総理だ。

 菅義偉総理は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部で、会議の終了前にこう原稿を読んだ(こう発言をした、というよりこう原稿を読んだ、というのが正しい)。

「(20日の分科会の『Go To キャンペーン』の運用の見直し提言、)この提言を踏まえ、これまでの知見に基づく効果的な対策を、迅速に実行します」

 迅速? まるで「キーン」といって走る「Dr.スランプ」の主人公・アラレちゃんみたいだな(アラレちゃんは速いんだけど)。

 分科会の提言が20日。18日にはすでに日本医師会の中川会長が定例会見で、「(Go To トラベルが感染拡大の)きっかけになったことは間違いないと私は思っている」と語っていた。中川さんは11日にも「第3波と考えてもいいのではないか」「非常に切迫した状態」と危機を訴えていたわけで、20日の分科会の判断も遅いし、その翌日に対策を迅速に実行すると述べている菅さんもおかしくないか?

 しかも、菅さんの語る対策は総理とは思えないほどちまちましたもの。Go Toのポイントがどうとか、マスクの着用がうんたらとか。

 この人たち、コロナに関し、ちゃんと専門家の意見に耳を傾けている?

 あたしがいう専門家とは、その時々の政治的便宜など図らず、真っすぐに科学的意見をする学者たちのことだ。

 まずそこが怪しくないか? まともな学者を憎んでいるしな。ただ時間稼ぎしてるんじゃね?

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

週刊朝日  2020年12月11日号