首と手や足などに傷みやしびれがある場合は、頸椎(けいつい)疾患の発症が疑われる。

 東京都大田区に住むタクシー運転手の川口敏和さん(仮名・58歳)は、2012年春ごろから肩にこりを感じていた。職業柄、それまでも肩がこることがあったが、いつもと感じが少し違う。数週間がたったころから、肩甲骨の周囲や左手にしびれるような感覚が現れるようになった。

 そこで川口さんは、国際医療福祉大学三田病院脊椎脊髄センターを受診した。川口さんの診察を担当したのは、同センター副センター長で脳神経外科医の朝本俊司医師だった。朝本医師は、骨が変形して出っ張った骨棘(こつきょく)による「変形性頸椎症」と診断した。

「問診では椎間板ヘルニアを含めたあらゆる頸椎疾患が疑われましたが、骨の状態がはっきりわかるCT(コンピューター断層撮影)の画像で、骨棘が脊髄を圧迫していることが確認できました。実は頸椎疾患では、こうした骨棘による変形性頸椎症のほうが椎間板ヘルニアよりも圧倒的に多いのです」(朝本医師)

 では、骨練はなぜできてしまうのだろうか。そして、変形性頚椎症が進行すると、どのような症状を引き起こしてしまうのだろうか。

「変形性頸椎症における骨棘とは、頸椎にできる骨の突起物のことをいいます。骨には負荷がかかり続けると強くなろうとする性質があるため、加齢や下向きの姿勢をとり続けたりすることで、頸椎に骨棘ができてしまうことがあるのです。その骨棘が神経板や脊髄を圧迫することで、手足のしびれや痛み、運動障害などを引き起こしてしまうのです」(同)

週刊朝日 2013年3月8日号