
慶應義塾大と東京歯科大は、2023年4月をめどに統合することをめざして協議を進めると発表した。
この統合は双方にとってプラスといえる。慶應義塾大はさまざまな専門分野を抱える総合大学としての地位を固めることができ、学部、大学院横断で最先端研究に取り組める。東京歯科大も「名」は失うが、慶應のブランド力で優秀な学生を集めることができるため、大学運営は安泰という「実」をとることができる。
大学が他大学を吸収合併すること、いわば大学のM&Aによって、大学はどう変わるだろうか。次の三つの視点で探ってみよう。
(1)入試難易度
(2)統合時点における学生の在籍問題(統合先の大学に移るか=転籍、統合前の大学に籍を置いたまま卒業するか)
(3)卒業後の進路(国家試験合格率)
慶應義塾大は2008年に共立薬科大と統合し、慶應義塾大薬学部を誕生させている。このときのケースをふり返ってみよう。
まず入試難易度(偏差値)である。2008年の前後で、両大学の薬学部は次のように変化した(代々木ゼミナールなど調べ)。
2007年 共立薬科大薬学部 64
2009年 慶應義塾大薬学部 67
なお、2007年まで私立大薬学部の難易度で長く1位だったのは東京理科大である。だが、2008年、慶應義塾大がトップの位置につき今日にいたる。慶應のブランド力が偏差値を押し上げたといっていい。
次に学生の在籍問題。統合、合併によって、在学生はどの大学に所属することになったか。
2008年4月、慶應義塾大では「薬学部・大学院薬学研究科在校生転籍式」が開かれ、同年3月まで共立薬科大に籍があった薬学部631人、大学院薬学研究科修士課程80人、同博士課程18人の計729人が、晴れて慶應義塾大の学生になった。転籍式では新たに「塾生」になった学生を、應援指導部など在校生が校歌の「若き血」や「慶應讃歌」を歌って歓迎した。慶應への愛校心を高め、帰属意識を強く持たせる、つまり、「塾生」としての一体感を植えつけるためである。