■速やかな被害者の救済

 相談件数は、設置した6月末~9月末の約3カ月で646件。相談内容には、個人の名前を出し「死ね、殺したい」などと攻撃されたという投稿や、コロナ禍で地域掲示板に自分の氏名でスレッドがつくられ、「コロナに感染した」など事実ではない内容を書き込まれ誹謗中傷されたケースがあった。

 同協会では「対象情報から個人が特定可能である」など判断基準を満たす183件の投稿の削除をプロバイダーに要請し、うち130件が削除された。できるのは「削除要請」までで法的拘束力はないが、相談者の不安に寄り添う機関となっている。

「実際に7割以上が削除されています。自分で抱え込まずに相談してほしい」(同協会事務局の吉井まちこさん)

 先の花田さんは、問題解決には、速やかな被害者の救済を目指すことが重要だと話す。

「規範を守るというルールをつくり罰則を強化すれば誹謗中傷の件数は減りますが、被害者はゼロにはなりません。まずは誹謗中傷をされた時の被害者の救済方法を考え、発信者情報開示請求の手続きをもう少しやりやすくするなど、手続きの簡素化が大事です」

 現在の法制度では、発信者を特定するには裁判を起こし「発信者情報開示請求」をしなければならず、時間とコストがかかる。ケースにもよるが、損害賠償請求を含めると被害者負担は弁護士費用だけで50万円超。発信者情報の開示も半年から1年くらいかかる。そうした中、国は匿名による誹謗中傷の投稿を規制する法整備の検討を進める。

 昨年9月に8歳の娘がキャンプ場で行方不明になった小倉とも子さんも、ネット上の誹謗中傷の被害者の一人だ。小倉さんは、こう話した。

「言葉は相手を傷つける武器にもなります。自分の臆測や考えだけでネットに書くことによって受け取った相手がどういう思いをするのかを、もっとよく考えてから発信してほしいです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年12月14日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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