「ahamo」を発表したドコモの井伊基之社長(右)。若者向けのイメージを強調した/12月3日、東京都渋谷区 (c)朝日新聞社
「ahamo」を発表したドコモの井伊基之社長(右)。若者向けのイメージを強調した/12月3日、東京都渋谷区 (c)朝日新聞社
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AERA 2020年12月21日号より
AERA 2020年12月21日号より

 NTTドコモが発表した新プラン「アハモ」が、業界に大きな衝撃を与えている。格安各社の淘汰や販売店の大量閉店を招くおそれもありそうだ。AERA 2020年12月21日号では、アハモが与える様々な影響を取り上げた。

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「ディスラプティブ(破壊的)だ」

 携帯電話料金値下げに向けた政策を長年打ち出してきた政府幹部は、NTTドコモの新プラン「ahamo(アハモ)」について驚きを隠さなかった。今後、KDDI(au)やソフトバンク楽天も追随せざるを得ないとみられ、ガラケー時代を含めても過去に例を見ないほどの大幅値下げ競争の嚆矢になるとみられる。

■「採算割れ」不安視の声

 ただ、アハモをきっかけとする値下げ競争は大きな波紋も広げそうだ。従来、値下げの牽引役として政府が後押ししてきた楽天や、通信インフラを大手携帯キャリアから借りてサービス提供する格安スマホ事業者(MVNO)を淘汰してしまう可能性もあるからだ。

 また、アハモをオンライン受け付けのみ対象としたことが、販売現場の混乱や販売代理店の減少につながる可能性も高い。そのため、政府は、販売現場の激変緩和措置として代理店をマイナンバーカードなど行政手続きのデジタル化の利活用を教える窓口や、「ほけんの窓口」のようにすべての携帯キャリアの販売窓口とする実証実験の検討に入るなど、“破壊的”なドコモの値下げによる悪影響を抑える対応に追われている。

「来年3月から提供開始ですが、オンライン受け付けは始まっています」

 アハモの発表から1週間も経たない12月9日、東京・新宿のショッピングモール「アルタ」の地下で、ドコモは特設ブースを設置してアハモのPRや説明を行っていた。

 ドコモが3日に発表したアハモは、データ通信20GBと5分以内の通話のセットで、割引のための複雑な契約条件などは無く月額2980円(税別)。高速な5G通信にも対応しており、政府関係者が「コスト割れはしていないと思うが……」と心配するほど驚きのプランだ。

 2年前に菅義偉官房長官(当時)が「携帯料金は4割は値下げの余地がある」と発言したころに比べると7割以上の値下げで、ドコモ関係者は「菅氏の政治介入の結果による値下げだから、アハモというより『スガモ』だ」と笑う。

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