井伊基之社長が3日の記者会見で強調したのは、これまでドコモが弱かった若年層を取り込むという狙いだ。そのため、会見では若手社員が登壇してプランを紹介するなど、これまでのドコモのイメージを変えようとする姿勢を強調した。若者が集まるアルタでアハモのキャンペーンを行うのも、ドコモの本気の表れと言えそうだ。
■ブランドでなくプラン
アハモの料金水準は、KDDIやソフトバンクのメインブランドはもちろん、両社のサブブランドのUQモバイルやワイモバイルすらも下回っている。楽天は通信量無制限でアハモと同額だが、通信インフラの整備状況でドコモに後れを取っているため、対抗値下げに踏み切らざるを得ない状況だ。
KDDIは9日に、アハモの発表以前から用意していたとみられる月額9350円の5G向け新プランを発表。アハモと比べて高額な料金や割引条件が複雑なことなどで大炎上したが、アハモへの対抗値下げは今後、検討するという。ソフトバンクはドコモがアハモを開始する直前まで静観するとみられるが、かねて若年層の割合が高いとされるため、アハモでごっそり顧客をドコモに奪われる可能性もある。
携帯キャリア各社以上に、アハモへの対応に神経をとがらせているのが販売店の現場だ。なぜならドコモの従来のメイン顧客であるシニア層が代理店に押しかけて「なぜアハモは代理店での契約に対応しないのか」などのクレームをつけることが容易に予想されるからだ。販売店関係者は「高齢者は例外的に店舗契約をOKにしたり、専用の説明要員を用意したりしないと、代理店も顧客もドコモもみな不幸になる」と嘆く。
ドコモがアハモを「若者向けのセカンドブランド」とせずに「若者向けの料金プラン」と位置づけたことも混乱の一因だろう。ドコモは元々はワイモバイルなどのようにセカンドブランドとしてアハモをアピールする考えだった。これは、ドコモ契約者でもアハモのサービス開始当初は、アハモにプラン変更する際には他社からの乗り換え(MNP)扱いになることなどから明らかだ。
ただ、武田良太総務相が携帯キャリアに対してメインブランドでの値下げを事実上、強要。ドコモは急遽、メインブランドの中の新プランとしてアハモを位置づけることになったため、若年層以外からも「ブランド変更は難しそうだけどプラン変更ならやってみたい」と思われて、ハードルが低くなってしまったというわけだ。(ライター・平土令)
※AERA 2020年12月21日号より抜粋