※写真はイメージです (GettyImages)
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歯周病菌とアミロイドベータが脳に大量にたまる仕組み (週刊朝日2020年12月25日号より)
歯周病菌とアミロイドベータが脳に大量にたまる仕組み (週刊朝日2020年12月25日号より)

 厚生労働省の調査によると、歯肉炎や歯周病の患者数は400万人弱。45歳以上の約5割に4ミリ以上の歯周ポケット(中程度の歯周病)がある。

【図解】歯周病菌とアミロイドベータが脳に大量にたまる仕組み

 口の中には多くの菌が生息している。そのなかでも歯周病の患者に多く見られるのが、ジンジバリス菌だ。悪玉の中の悪玉ともいえる歯周病菌で、認知症だけでなく動脈硬化などの発症に関わっている菌としても注目されている。

 このジンジバリス菌とアルツハイマー病との関係について、10年以上前から研究を行っているのが、九州大学大学院歯学研究院(福岡市)の武洲(たけひろ)准教授らだ。

 武准教授らは、人間では中年に相当する月齢の健康なマウスにジンジバリス菌を投与。認知機能の低下などアルツハイマー病のような症状が表れることを発見した。また、そのマウスの脳内にはアルツハイマー病の人の脳で増える老廃物「アミロイドベータ」がたまっていることを突き止めた。

「ジンジバリス菌は異物なので、脳のミクログリアという免疫細胞に取り込まれて炎症を起こします。この炎症が神経細胞を刺激してタウタンパクを変性させたり、アミロイドベータを作り出したりします。その際にはカテプシンBという酵素が必要になるのですが、ジンジバリス菌によってカテプシンBが増える量が若いマウスでは少なく、中年のマウスで多いこともわかったのです」

 と武准教授は言う。さらに今年7月、血液に乗って全身に回ったジンジバリス菌も、アルツハイマー病を引き起こす可能性があることを研究で明らかにした。

 実は、全身に回ったジンジバリス菌は先に紹介したのと同じメカニズムで全身の免疫細胞(マクロファージ)に取り込まれ、アミロイドベータを作り出している。

 ただ、脳には物質が脳内に入らないよう、血液脳関門という関所がある。そのため、体でいくらアミロイドベータが作られても、脳には行かないというのがこれまでの常識だった。

「ところが、脳の血管にはラージ(RAGE)という受容体があって、これがアミロイドベータを脳内に取り込むことが、今回の研究でわかったのです」(武准教授)

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