BPSD(認知症に伴う行動異常・精神症状)は症状が多岐にわたる。日本老年精神医学会副理事長で認知症の臨床に詳しい筑波大学病院の朝田隆医師に、BPSDへの対応について聞いた。
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BPSDへの対応を考えるうえでは(1)認知症の種類、(2)進み具合、(3)患者さん本人の元々のキャラクターという3大要因を評価することが基本になります。
進み具合でわけると、経済観念がある初期はもの盗られ妄想が、中期は暴言、暴力、徘徊が代表的です。脳の機能がかなり落ちてくる後期は、昼夜逆転や弄便(便を弄る)がみられます。
初期、中期のBPSDには、環境調整で対処するのが原則です。BPSDは対応の仕方次第で変わるという意味で、介護者と患者さんのキャッチボールと言われます。介護者がどんなボールを投げるかで、患者さんの出方も違ってきます。
一方、後期の弄便などの症状は、脳の病気が進行した状態で起きるため、対応の仕方を変えてもあまり解消しません。むしろ事態を想定して清掃道具を揃えておくなど、機械的な対応を検討するのがよいでしょう。
BPSDの中でも、暴力、暴言、嫉妬妄想などは比較的薬が有効です。薬物治療では、抑肝散(よくかんさん)」などの漢方薬や、メマリーなどアルツハイマー病の進行を遅くする薬にBPSDへの効果があることもわかってきました。
しかし薬を使うのは、環境調整でどうにもならない場合です。全国には「認知症疾患医療センター」に定められた病院があるので、深刻な状態になる前に受診することをおすすめします。
※週刊朝日 2013年3月15日号