金正恩 (c)朝日新聞社
金正恩 (c)朝日新聞社
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 2021年1月に米大統領に就任するバイデン氏。気になるのは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との関係だ。コリア・レポート編集長の辺真一氏はこう懸念を示す。

「21年3月には米韓合同軍事演習がある。規模を縮小せずに実施すれば正恩氏は対抗措置を取るかもしれない。ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験や核実験を行い、度重なる威嚇で緊張が高まった17年の状況に回帰する可能性があります」

 北朝鮮は10月の軍事パレードで新型ミサイルを6基も披露。朝鮮半島の非核化を目指し正恩氏とトランプ氏が署名したシンガポール合意を破棄するのか。

「北朝鮮の狙いは脅しで、自ら合意を破ることはない。むしろバイデン氏のほうが歩み寄ることもあり得る。オバマ政権が北朝鮮に提示した『1イエス3ノー政策』であれば、正恩氏は交渉のテーブルに着くでしょう」(辺氏)

 つまり、現在保有している核を当面黙認する(イエス)が、これ以上増やさない、改良しない、輸出しない(三つのノー)。最終的には保有している核も廃棄させるという2段階で北朝鮮の核問題を解決するというものだ。ただ、トランプ氏と正恩氏のような蜜月の関係は望めそうもない。軍事評論家の前田哲男氏が指摘する。

「正恩氏はトランプ氏との間でショーアップされた舞台でのトップ会談を味わったが、バイデン氏は特使などを派遣して下から積み上げていく伝統的外交手法を取るはず。正恩氏は、それでは飽き足らないという感情を持つかもしれません。バイデン政権が交渉に消極的だと、ICBMなどの発射実験を行うのもオプションの一つでしょう。全米を射程圏に収めたと誇示しながらメッセージを送ることもあり得ます」

 また振り出しに戻るか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号