


新型コロナウイルスの蔓延により、舞台という3密を避けられないエンターテインメント業界は、大きな打撃を受けた。突然立つべきステージを失った、踊りという文化を担う人々に、同じ表現者として3人のフォトグラファーが迫った。2020年12月28日-2021年1月4日合併号に掲載された記事を紹介する。
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新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた業界は多いが、エンターテインメント業界もその例外ではない。10月27日に発表された「ぴあ総研」の試算によると、日本の2020年の音楽ライブ、舞台などのパフォーマンスイベントの市場規模は1306億円。対前年比8割減となる見通しだという。海外の状況も厳しい。カナダの有名なサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」は6月に経営破綻した。米ニューヨークのブロードウェーミュージカルは21年5月末まで休演予定だ。
多くの公演が中止や延期となり、仕事のスケジュールが一旦白紙になったという表現者は多い。舞踏家の松岡大が所属する舞踏グループ「山海塾」の世界ツアーもストップした。松岡は「文化を担う人々は、こういうことで活動を止めざるを得ないのか」と無力感におそわれたという。
■オンラインでの試みへ
だが、ただ悲観していたわけではない。新たな試みとして、活動の場をリアルの世界からネット上に移す表現者たちが続々と現れ、松岡もその波に乗った。松岡が主催するパフォーマンスイベント「LAND FES」では、月額制のオンラインコミュニティーを開始。ファンが一定額を支払う対価として、新作のパフォーマンスなどの動画コンテンツを定期的に配信する。またダンサーのCHIAKIは、オンラインで個別指導のレッスンを始めた。ファンにとっては嬉しいサプライズに違いない。
こうしたデジタルコンテンツの多くは、本来予定になかったものだ。ワクチンが普及し、以前のような日常が戻ってくれば、表現者たちは“表舞台”に復帰するだろう。そこで筆者はフォトグラファーとして、仲間の宮川舞子、葛西亜理沙とともに「裏舞台で踊る人々」を撮りはじめた。コロナ禍を反映するパフォーマンスの記録になると感じたからだ。撮影場所には、自宅や稽古場など、各表現者が自粛期間に最も活動した場所を選んだ。単に撮影するのみならず、その声に耳を傾けたことで、表現者たちの意識や活動の変化を感じた。