安さを売りにした自動車保険のCMをテレビで見たことがある人も多いだろう。ジャーナリストの柳原三佳氏は、その安さの裏に「倍額条項の有無」の差がある可能性を指摘する。
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自動車保険の「倍額条項」をご存じだろうか。「補償内容は変わらない」と思っていたら、損保会社によって、倍額条項がついていたり、いなかったりするのが実情だという。
賠償保険や車両保険など、さまざまな種類がある自動車保険のなかで、人身傷害保険とは、契約者が自動車事故の当事者になった際、過失の割合にかかわらず、実際にかかった入院費や休業補償、慰謝料などが補償される保険だ。
事故でけがをしても、自損事故や自分に重過失がある場合、また加害者である相手側が無保険である場合は、経済的に困窮して、満足な治療が受けられない可能性がある。そんなときに救いとなるのがこの保険だ。契約者本人と家族であれば、自動車に乗車中だけでなく、歩行中や自転車乗車中に事故に遭っても補償されるタイプもある。
この人身傷害保険に、倍額条項がついていると、事故で要介護の重度後遺障害と診断されたとき、支払い上限が2倍になる。
保険金額によっては条項の有無は億単位の差にもなる。事故によって重い障害を負う、きわめて深刻な状況で適用される条項だけに、条項の有無は、事故後の契約者の明暗を大きく分ける可能性がある。
だが、損保会社によって、同じ人身傷害保険でも、倍額事項がついていたり、いなかったりするのが実情だ。
※週刊朝日 2013年3月22日号