――イチローさんが「引退」したことで、モノマネの仕事に影響があるのではと不安に思ったことはありませんでしたか?
あの日は、自分のことを考えたりすることは一切なかったですね。もう、イチローさんのことしか考えていませんでした。もし、イチローさんが引退したことで、仮に僕に対する需要が減るようなことがあっても、僕自身がやることは変わらないと思っていたからだと思います。唯一変わることがあるとすれば、毎日見ていたMLBの試合を見ることがなくなって、イチローさんの進化を追っていくっていう作業がなくなるっていうことだけ。仕事はありがたいことに減ることはありませんでしたね。逆に2019年はこれまででいちばん忙しい年でした。これもすべて、イチローさんの凄さ。イチローさんの影響力のおかげだと思っています。
――そもそもニッチローさんは、なぜイチローさんのモノマネをやり始めたのでしょうか?
モノマネをし始めたのは2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(以下:WBC)が開催された頃です。僕は当時飲食店で働いていたんですが、何人かのお客さんから「イチローに似てるね」って声をかけられたのが始まりですね。僕は元々サッカー好きだったので、それまでイチローさんのことを特別意識したことはありませんでした。ただ、頻繁に言われるようになっていたので、お客さんを喜ばそうと思い、キャップを被ってバットを立てるしぐさをたまに披露するみたいなことをやっていました。ただ、この時は、あくまでサービスの一環としてやっていただけですね。
――きっと名物店員だったんでしょうね(笑)。モノマネに本格的にのめり込むようになったのはいつ頃ですか?
2009年の第2回WBCの時ですね。予選が行われていた東京ドーム前で、イチローさんのモノマネを披露したんですが、これで完全に味をしめました(笑)。当時、ユニフォームはまだ持っていなかったので、マリナーズのキャップとTシャツ、プラスチックのバット、仕事で使っていたホワイトジーンズ、家にあったナイキのスニーカーを適当に選んで、モノマネを披露しました。僕はロン毛だったので、キャップから髪の毛が少しはみ出ていたりして…、今思うと、「寄せ集め感」「偽物感」がすごかったですね(笑)。