作家の北原みのりさん
作家の北原みのりさん

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。2020年最後の配信となる今回は、フェミニストの視点で今年の10大ニュースを選びました。

【写真】ここにも貼られていた。草津町の議員リコールを求めるポスター

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 毎年この時期になると世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数が公表され、日本の順位がまた下がったよ! ご近所にはアラブ首長国連邦とかクウェートとか石油が出る国しかないじゃん!と騒然とするのがフェミニストの年末気分なのですが、今年はコロナ禍だからでしょうか、クリスマス越えてもジェンダーギャップがまとまっていないようです。

 世界的なパンデミックに見舞われた2020年、期せずして“ジェンダー”は大きなテーマになったようにみえます。ドイツ、ニュージーランド、台湾をはじめ女性リーダーたちの冷静で適切な指導力が功を奏する一方で、パンデミックを戦争にたとえ、マスクを着けずに戦いに挑んだマッチョなリーダーの国々では、ことごとく深刻化してしまう哀しさ。また、エッセンシャルワーカーの多くが女性であることなど、このような非常事態ではジェンダー不平等がより露骨に女性の人生を押しつぶす現実も可視化されました。フェミ的にもありすぎるほどのニュースがありましたね……。ということで、2020年最後のコラムでは、私的フェミニスト10大ニュースを勝手に選んでみました。

1 性犯罪事件逆転有罪
 フラワーデモのきっかけとなった2019年3月に続いた4件の性暴力無罪判決のうち、検察が控訴しなかった1件を除き全てが逆転有罪になりました。

 テキーラを何杯も飲ませ意識失わせて行う性交を「同意と勘違いした」と認定するような判決や、実父による性虐待を娘が同意していたともとれるような判決に「なぜ?!」と声をあげ、被害者に寄り添う#MeToo#WithYouの声が、性暴力に対する世論を変えた結果でしょう。勝利の少ないフェミ界において、私たちの声が現実を変えるのだ、という実感は希望です。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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