東大が2016年度から、推薦入試制度を導入する。筆記試験を課さずに入学を認めるのは、東大の長い歴史のなかでも黎明期と戦時下をのぞき初めてだ。なぜいま、推薦入試なのか。大学通信の安田賢治ゼネラルマネージャーはこう指摘する。

「東大は多様な学生を集めるという目標を掲げていますが、最近は首都圏出身の学生が多数を占めて“関東ローカル化”し、出身校も私立の中高一貫校に偏っている。全国から学生を集められないなら、グローバル化どころではありません。推薦入試は、こうした事態を打開する学内活性化策のひとつでしょう」

 東大は、留学生や女子学生比率を増やすという中期的ビジョンを掲げている。その付属資料では東大をめぐる問題として、「保護者の職業・出身校の偏り」をあげている。学生の保護者は、医師や弁護士、大学教授、大企業や官公庁の管理職、経営者など知的で裕福とされる人たちが7割以上を占める。学生も、半数以上が私立の中高一貫校出身者で、同質化が進んでいる。

 そうした中で、研究や論文の引用件数、国際的な賞の受賞などで判定される各種の世界大学ランキングも、20~30位台と低迷。こうした状況を打開するため、昨年発表された「秋入学」の検討に続いて打ち出したのが、推薦入試なのだ。

週刊朝日 2013年3月29日号