

うんざりする言葉「秘書が……」は、政治家の間で脈々と受け継がれてきた。責任逃れともとれるが、泥をかぶる当の政治家秘書にも「変化」があるという。政治家と秘書の関係について取り上げたAERA 2021年1月11日号の記事を紹介する。
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「桜を見る会」の前夜に安倍晋三前首相の後援会が開いていた夕食会の問題は、年末になって慌ただしく動いた。
従来の国会答弁から一転、安倍氏側が費用の一部補填を認めると、東京地検特捜部が安倍氏本人を任意聴取。3日後、安倍氏は不起訴とする一方で、後援会代表の配川博之公設第1秘書(61)を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。
誰のどんな意図なのか──この間、メディアにはリークに基づくニュースがあふれた。地検の処分を先取りする内容で、まるで「安倍氏は不起訴」の地ならしをしているかのようだった。
■俺が泥をかぶって守る
自民党国会議員の現役秘書が言う。
「会計まで把握していない場合もあるでしょうが、責任がある者は責任を取るべきでしょう。上司に管理監督責任が問われるのは一般企業でも同じですが、社会的、政治的な責任の問われ方は政治家の方が厳しくあるのが本来の姿。国会で虚偽の答弁を繰り返した責任も重大です」
政治家本人が責任を取らないことに、我々は慣らされていないだろうか。「トカゲのしっぽ切り」はこれまでも数えきれないほど行われてきた。
泥をかぶる秘書の仕事とはいったい、どんなものだろうか。
『ドロのかぶり方』などの著書があるコラムニストの尾藤克之さん(53)は、自民党国会議員の秘書経験もある。その内実について考えるうえで押さえておくべきは、秘書には後援会関係のコネなど議員の直接採用の場合と、党による一括採用の場合がある点だという。
「党本部の採用の場合は国会議員をかばわないケースが多くなります。ただ、特に自民党では議員による直接採用なので、ある意味『俺が泥をかぶって先生を守る』といった感覚が不文律のように存在していました」
しかも、尾藤さんは政治資金規正法違反のような一般に形式犯と見なされそうなケースでは、秘書にとってもそこまで恐れることではないという。