世界で大旋風を巻き起こしているBTS。2020年にリリースした「Dynamite」が、ビルボードシングルチャートで1位を記録。グラミー賞にもノミネートされた。その快進撃を支えるファン=ARMY。一体どんな存在なのだろうか。AERA 2021年1月11日号で、ライター・酒井美絵子氏が解説する。
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米国三大音楽授賞式の一つ「ビルボード・ミュージック・アワード」で2020年10月14日、BTSが「トップ・ソーシャル・アーティスト」を受賞した。これはSNSアプリTikTokを使ったファン投票が大きな力を持つ賞で、17年の初受賞から4年連続という快挙だ。
BTSは、ファン投票がカギを握る賞レースにおいて無敵だ。なぜなら、彼らにはARMY(アーミー)と呼ばれる熱狂的なファンが世界中にいて、熱心に投票活動を展開するからだ。
そもそも、BTSが世界的に注目を浴びたのも、17年の「ビルボード・ミュージック・アワード トップ・ソーシャル・アーティスト」の受賞がきっかけだった。世界中のARMYが、一丸となって勝ち取った世界的タイトル。ARMYは、「仲間と共に戦った達成感」と「一人一人の力は小さくとも力を合わせれば、難しいことでも成し遂げられる充実感」を得たに違いない。
■多言語に翻訳し共有
K‐POPには独特のファンダムが存在する。「拡散」「善行」「見守り活動」という三方向からのアーティストへの“自主的な”援護射撃だ。そんなファンダムを、SNSを活用してワールドワイドに展開し、成功したのが、ARMYだ。
まずは「拡散」。次々と上がってくるBTSにまつわるニュースや動向をSNSで逐一拡散し、新曲が出れば大量にストリーミング再生をしてランキングを上げる。テレビやラジオ番組に曲をリクエストし、動画共有サイトでリアクション動画やコピーダンス動画を公開する。ライブ動画配信サービスをはじめとするあらゆるメディアに大量供給されるコンテンツを、自分で楽しむだけでなく、“親切にも”韓国語ができない他のARMYのために多言語へ翻訳し、共有する。論文テーマにBTSを選び、文化的価値を与えようとする人もいる。