指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第52回は、年末年始の成果について。
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年末年始の練習は大変順調にできました。昨年12月に長野県東御市で行った準高地合宿で泳ぎと体作りのベースができていたので、そのままJISS(国立スポーツ科学センター)での合宿に入って、しっかり強化に取り組めました。
指導では練習の目的や狙いをきちんと選手に説明することを意識しています。前々回も書きましたが、選手の理解力が高まっているので、一緒に前に進んでいる手応えを感じています。
昨年12月の日本選手権を欠場した大橋悠依も練習に合流して、日々の練習で力を取り戻しつつあります。
このオフのトレーニングのポイントの一つは、陸上トレーニングと泳ぎの連動性を高めることです。東御市の準高地合宿からトレーナーと相談して、水中の姿勢がより安定して、パワーが発揮できるように、ウェートトレーニングやドライランドと呼ぶ補強運動のプログラムを変えました。
水中での姿勢が安定すれば、腕のかきとキックのパワーが効率良く使えるだけでなく、水の抵抗も抑えることができます。トレーニングの効果は出ていて、萩野公介でいえばクロールを始めとして泳ぎがより安定して、レースペースぐらいで泳ぐときはストローク数も少なくなっています。
これからトップスピードを上げる練習に移行していきます。腕のかきに力を入れても水中姿勢がぶれないように、じっくり取り組んできた陸上トレーニングの成果が、ここから発揮されると思っています。
新型コロナウイルスの感染拡大防止については十分な注意を払って練習してきましたが、1月7日に首都圏の4都県に緊急事態宣言が出て、気持ちが引き締まったことは確かです。ただ、年末年始の休みが明けたら感染者が増えるという予測が報じられていましたし、昨年の緊急事態宣言のときに感染防止策をとりながら練習することについて学習してきたところがあるので、落ち着いて受け止められています。