合同トライアウトが始まったのは01年。当時は戦力外通告を行う時期が詳細には決まっておらず、日本シリーズに進出したチームなどで通告が遅れる傾向にあった。結果、他球団の入団テストを受験できないケースがあり、日本プロ野球選手会が球団側に対し、平等に受験できる場をつくるよう求めて始まった。つまり、「入団テスト」に近い場ではあるものの、選手を獲得したい球団側が設けたものではなく、選手側が受験機会を求めてできた場なのだ。

「どの球団もシーズン中から他球団の選手のチェックはしています。戦力外になった選手がどのくらいやれるかはシーズン中のパフォーマンスでわかっている。『トライアウトで活躍したから獲得する』とはなりにくいのだと思います」(久古さん)

 実際、戦力外通告を受けたのち、トライアウトを受験せずに別のチームと契約する選手も多い。20年は前述のとおり4人がトライアウトに合格したが、それ以外にも戦力外通告を受けた4選手がトライアウトを受験せずに他球団と再契約している(1月5日現在。同一チームと育成再契約したケースを除く)。また、ソフトバンクを退団しヤクルト入りした内川聖一選手(38)や、「事実上の戦力外」と報じられた前阪神の能見篤史投手(41、オリックスへ)、福留孝介選手(43、中日へ)のように、球団との話し合いで自由契約となりトライアウトを経ずに他チームへ移籍する選手もいる。

■トライアウトに不要論

 トライアウトを受験する、しないに関わらず、戦力外となった選手と他球団の交渉が解禁されるのはトライアウト終了後だが、その前から情報共有や非公式の接触があるとの指摘も多い。「他球団の動きや誰が別のチームと契約できそうかという感触はトライアウト前から伝わってくる」と話す元プロ選手もいる。

 そんな事情もあって、「トライアウトに意味はない」「その役割を終えた」との指摘はここ数年付きまとっていた。

 それでも、関係者の多くは「不要論」には待ったをかける。元プロ野球選手で野球評論家の森本稀哲(ひちょり)さん(39)は言う。

「ないよりもある方が明らかにチャンスはあります。年間数人とはいえ、トライアウトを経て再入団する選手はいる。シーズン中にある程度の能力はわかっていても、トライアウトで再確認して契約にいたるケースは多いはずで、トライアウトが不要だとは思いません」

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