

戦力外通告を受けた野球選手たちの再起の場、トライアウト。48歳にして現役復帰を目指した新庄剛志さんの姿に、心を打たれた人も多いだろう。だが、トライアウトの意義は「再契約」だけではない。グラウンドには様々な思いが駆け巡る。
【写真】2度トライアウトに挑戦するも「心残り」を語った元巨人の選手はこの人
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真新しいユニフォームに袖を通し、笑顔を見せた。
「一度、クビになって終わった身なので、新しい自分を作って貢献したい」
12月21日、横浜DeNAベイスターズへの入団会見でそう話した風張蓮(かざはり れん)投手(27)。2015年にヤクルトへ入団し、18年には53試合に登板。しかしその後低迷し、20年オフに戦力外となって12球団合同トライアウトを受験していた。風張投手はトライアウトで打者3人に対して無安打2奪三振の活躍を見せ、DeNA入団に至った。
トライアウトは、戦力外通告を受けた選手たちがプロ再契約への望みをかけて集う舞台だ。しかしその道は細く、険しい。
■目的は「機会の均等化」
ここ数年、プロへ復帰できるのは育成契約も含めて5人以下に留まる。20年も56選手が参加したが、プロ12球団との契約にこぎつけたのは風張投手のほか、日本ハムを戦力外になりヤクルト入りした宮台康平投手(25)、いずれも前ソフトバンクでオリックスと育成契約を結んだ田城飛翔(たしろ・つばさ)選手(21)、ヤクルトと育成契約した小澤(こざわ)怜史投手(22)の4人だけ。
06年以来のプロ再挑戦が話題を集めた新庄剛志さん(48)、18年のセ・リーグ最優秀中継ぎ投手でトライアウトでも2三振を奪うなど活躍した前ヤクルトの近藤一樹投手(37)、かつては160キロを超える剛速球で知られた前楽天の由規投手(31)ら実力者にも吉報は届いていない。風張投手らはトライアウトで結果を出したが、トライアウトでの活躍が再契約へ結びつくとも限らないのが現実だ。
自身も18年にトライアウトを受験した元ヤクルトの久古(きゅうこ)健太郎さん(34)は、トライアウト受験者のプロ再契約が難しい現状についてこう指摘する。
「トライアウトは球団側ではなく選手会側が求めた制度で、目的はあくまで『機会の均等化』です。契約する球団側が何を求めているかに沿った場でなければ、それ以上の役割を果たすのは難しいのではないでしょうか」