「大統領は、明らかに暴徒が、議会の(バイデン氏)承認プロセスを中断させ、遅らせることを意図していた」


「議会で承認されるのを見たくないから、承認させない障害にするために支持者たちを利用したのだと思う」

 議会への不法侵入が、普通の市民や世界中の人びとを驚かせたのは、暴徒らが自国のアメリカ合衆国憲法を不遜にもないがしろにしたという事実だ。憲法が議会に対し、大統領選挙の勝者を公式に承認することを定め、議会はそれを遂行しようとしていた。つまりは、憲法と議会政治、その根本にある民主主義に対する冒涜(ぼうとく)でもある。弁護士でもあるボルトン氏はこう指摘する。

「暴徒がみな憲法学者というわけではない。彼らは、大統領が『やってもいいんだ』と言ったのを聞いた。だからこそ、トランプ自身に、支持者らを(そうした)行動に差し向ける策略があったのだと思う」

 襲撃事件は一転、首都ワシントンを混乱から反撃へと向かわせた。一度は議事を中断し、議事堂の地下通路を使って避難したり、あるいは執務室にこもったりした議員らを突き動かした。ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が率いる下院は13日、トランプ氏に対する弾劾(だんがい)訴追の手続きを賛成多数で可決した。上院で3分の2以上の賛成多数が得られれば、大統領を罷免(ひめん)することができる弾劾訴追の手続きを在任中に2度も受けるのは、トランプ氏が初となる。

(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))

AERA 2021年1月25日号より抜粋