今、日本で最も“緊急事態”に陥っているのは首相官邸ではないか。官邸関係者は言う。
「菅義偉首相の周囲にいる官僚はイエスマンばかり。問題点を進言しても菅首相の耳には入らない。官僚たちも嫌気がさしていて、『菅離れ』は政権末期のような状況です」
1月13日の新型コロナウイルス感染症対策本部で緊急事態宣言を再発出した際には、「福岡県」を「静岡県」と読み間違える失態を犯した。同日夜の記者会見では質問と回答がかみ合わず、「官邸はどうなっているんだ」(自民党幹部)と怒りの声も。
特に与党議員が反発したのが、国外からの往来規制についてだ。菅首相は当初、緊急事態宣言が出てもビジネス人材の入国は受け入れる考えだった。自民党議員は憤る。
「新型コロナの変異種が警戒されているのに、こんな対策はありえない。党の外交部会でも『水際対策をやっているのに、これでは水浸しになる』と批判が噴出した」
結果として、菅首相は海外からの往来停止を表明。だが、外国人の入国受け入れにこだわった理由は説明がないままだ。そこにはある事情があったという。自民党関係者はこう解説する。
「外国人労働者の受け入れは、菅首相が官房長官時代に手がけた政策。それに中国やベトナムと関係が深い二階俊博幹事長も関与した。菅首相は、二階幹事長に配慮して往来停止を言えなかったのでは」
内閣官房関係者が話す。
「すべての政策でお伺いを立てるというわけではないようだけど、『二階さんの傀儡(かいらい)』という見方をする人だっていますよ」
二階派の意向が強く出た場面は他にもある。
昨年12月21日の国家戦略特区諮問会議では、企業による農地取得の自由化が議論された。現在、企業による農地の取得は国家戦略特区として兵庫県養父市でのみ認められている。会議では、民間の有識者議員である竹中平蔵氏らが特区の全国展開を主張。結論は、竹中氏と親しい菅首相の「預かり」となって終わった。