「花粉症の症状が出ると、手で目をこする回数が増えます。はなをかむ際はマスクを外さないといけません。そのとき目や鼻の粘膜に直接触れる可能性があるため、自分の手が新型コロナウイルスに汚染されていると感染リスクが高くなります」
花粉症の典型的な症状は目のかゆみ、鼻水、くしゃみだ。これらの症状は、自分が新型コロナに感染しやすくなるリスクを誘発するだけでなく、他人に新型コロナを感染させるリスクも高めてしまうという。
「新型コロナの感染者が花粉症になり電車内などで頻繁にくしゃみをすると、多くの飛沫が飛び散り、マスクをしていてもウイルスを拡散させてしまう可能性があります」
■くしゃみで拡散リスク
新型コロナは感染しても症状の出ない人(無症候感染者)がいることや、感染後に無症状の期間があることがわかっている。新型コロナの症状がなくても、花粉症によってくしゃみが出れば、ウイルスの拡散リスクを高めてしまうのだ。その結果、花粉症の社会的意味が変容する、と大久保教授は見据える。
「花粉症はこれまで患者個人の生活の質や作業効率に影響するのが問題でしたが、今年は新型コロナの感染流行と重なったことで他人を新型コロナに感染させる引き金にもなり得る、新たな社会的意味をもつ疾患になったのです」
では、私たちは花粉症とどう向き合えばいいのか。大久保教授は「コロナ禍の今年は、花粉症の症状を完全にコントロールすることが求められる」と言う。
これまで花粉症治療といえば、症状を緩和し、仕事や睡眠に大きな支障が出ないように処置すればよかった。しかしコロナ禍の新常態では、ほぼ完全に症状が抑えられる水準まで治療しなければ社会生活に支障をきたしかねない状況になった、というわけだ。
このため、大久保教授が呼び掛けているのは「例年よりもステップアップした治療」だ。毎年のことだから仕方がない、と考えて放置するのではなく、抑えられる症状は抑える。インフルエンザの予防接種を受けるような感覚で、それぞれが自分の体調に照らして事前の備えをしておくことが必要になる。