1970年代。ロックを専門に聴かせる喫茶店が全国にあった。その当時とはひと味違うロック喫茶が人気を集めている。今どきの名店を音楽ライターの和田静香が探訪した。

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 訪ねたのは東京・自由が丘にある「バード・ソング・カフェ」。自由が丘駅近くの路地を入り、ビルの地下へ。ギギギッと扉を開けると、棚に並んだ約2千枚のLPレコードに出迎えられた。カウンターとソファ2セットのこぢんまりした店内はほの暗く、ローリング・ストーンズの『ブラック・アンド・ブルー』が流れる。

 開店直後の午後7時、突然一人で来た一見(いちげん)さんに、店主の梅澤淳一さん(54)はいささか戸惑い顔だった。

 長髪を後ろで縛ってロックな香りをまとっているが、「こういうお店に初めて来ました」と言うと、笑顔で自らの音楽体験をじっくり語ってくれた。

「渋谷の百軒店にブラックホークというロック喫茶があってね。英国トラッド・フォークなんかが流れるアカデミックな雰囲気で、高校2年生ぐらいから通ったんですよ。就職して音楽から離れた時期もあったけど。9年前に知人の紹介で東京・中目黒で店を始め、自由が丘へ移って2年になります」

 懐かしそうに語る梅澤さんに、70年代の東京を歩くロック少年の姿が重なる。

 話の合間にかけてくれたお勧めのLPは、トニー・ジョー・ホワイトの『LIVE!』、フランキー・ミラー・バンドの『ザ・ロック』など。大音量でも、真空管アンプを通じて流れる音は耳に優しい。

週刊朝日 2013年4月12日号

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