ジョー・バイデン氏が1月20日、新大統領就任を宣誓した。厳戒態勢でゴーストタウンとなった首都ワシントンの就任式は、新政権の前にトランプ前大統領の影を感じさせた。AERA 2021年2月1日号の記事を紹介する。
* * *
「本当にビューティフル、感動的な就任式で、家族皆で泣いていたの!」
ホテルマネジャー、イブ・バルバネルさん(50)は、笑顔でこう語った。しかし、彼女らが涙していたのは、式があった首都ワシントンから約1400キロ離れたフロリダ州タンパだ。
過去10カ月、バイデン候補(当時)を勝たせるために「何でもしてきた」。新型コロナウイルス対策に配慮しながらも、有権者の戸別訪問に歩き回るなどした。
「膨大な時間を選挙戦につぎ込んだから、ワシントンに行って就任式を見るべきだと思ったの。フェースシールドと航空券を買って興奮していた」
しかし、1月6日、ワシントンの連邦議会議事堂への、トランプ支持者乱入事件が起きた。バイデン氏が大統領選挙の勝者であることを承認する上下両院合同会議が開かれる日だった。スペイン出身で、第2次世界大戦の傷跡を知るバルバネルさんと夫は翌7日、ワシントン行きの航空券を変更した。
就任式があった20日正午、筆者はワシントン中心部で、「歓喜の歌」を鳴らす教会の鐘を聞いていた。厳戒態勢で、ホームレスとメディア関係者がたまに横切るゴーストタウンと化した街で、1カ所だけ約100人のバイデン支持者が集まっている通りがあった。「一般客用」と警官に教えられて行った検問所前だ。バイデン陣営の帽子や旗をまとった人々が、就任宣誓と演説をスマートフォンの画面で見守っていた。
■自由を取り戻したい
「結束こそが私たちが進む道」
と、トランプ氏の分断時代を終焉させ、結束という言葉を繰り返すバイデン氏。「イエス!」「アーメン!」という言葉が飛び交い、強風と薄い冬の日差しの中でも、人々は笑顔だ。