英国を舞台にしたNetflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」と「ブリジャートン家」が世界中で人気を博している。「ザ・クラウン」は、エリザベス女王の半生を描いたドラマ。ベールに包まれた王室内を覗くような感覚から注目を集めている。英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんは言う。
【Netflixの視聴者数ランキング1位!「ブリジャートン家」の場面カットはこちら】
「フィクションですが、歴史的事実と女王を中心にした王室のストーリーを巧みに重ね合わせたドキュメンタリーのようにもみえます」
エリザベス女王があごの下でスカーフを結ぶ姿から、サッチャーのヘアスタイルや独特なしゃべり方、チャーチルの鼻声までそっくりだ。
「チャールズ皇太子は、昔から耳が立っていると揶揄されており、そうした特徴ある俳優を選定するなど、人物がビジュアル的にそっくりなのでとても驚きました」(多賀さん)
最新のシーズン4では、チャールズ皇太子がダイアナと結婚した後もカミラ夫人との関係を断ち切れない場面が描かれた。
「チャールズ皇太子がいない時に、カミラ夫人がダイアナ妃を食事に誘って、『狩りは好き?』と聞きます。狩りは王室の伝統ですが、ダイアナ妃は狩りを好まないので、『ノー』と答えました。それを聞いたカミラ夫人は、皇太子と狩りを口実に密会できると確信します。これは有名なシーンですが、きちんと再現されていました」(同)
チャールズ皇太子とカミラ夫人は2005年に結婚を果たした。国民の反感を避けるために控えめにふるまい、熱心に公務を続けてきたカミラ夫人だったが、「ザ・クラウン」により、過去が蒸し返されてしまった。
「王室公式インスタグラムに批判が殺到し、カミラ夫人に暗殺予告が届くほどでした」(同)
また20年12月25日に配信された「ブリジャートン家」は、世界70カ国以上でNetflixの視聴者数ランキング1位を記録した話題作。19世紀初頭、摂政時代におけるロンドン社交界を舞台に、名門ブリジャートン家の8人きょうだいが、それぞれの結婚や自由を求めていく物語。
「原作はジュリア・クインの『The Duke and I』というベストセラー小説。彼女は、米ハーバード大学で芸術史を学んだ後、イエール大医学部に入学した稀有(けう)な人物。軽いロマンス小説かと思いきや、貞節を守る厳格な社会通念のもと、女性の信念や人生の選択に重きを置いたフェミニズムの萌芽が描かれた奥深い作品でもあります」(同)
貴族の社交界で読まれるゴシップ記事の謎の著者、レディ・ホイッスルダウンの声は名優のジュリー・アンドリュース。英王妃、大貴族をアフリカ系俳優が演じるなど英王室とメーガン妃を連想させる設定だ。(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2021年2月5日号