石に枕し、流れを阻む――。酒に酔ったのか、車道で寝る「路上寝込み」。でも笑いごとではない。歴とした道交法違反で、摘発もされる。

 初めての摘発だった。昨年4月12日の午前3時前のこと。埼玉県内の国道を走っていたトラック運転手の目の前に、急に男性の寝姿が現れた。深夜の街にブレーキ音が響いた。

 トラックは男性の手前ぎりぎりで停止。運転手はほっと胸をなでおろしたが、停止できなかった後続のトラックやトレーラーなど4台が事故に巻き込まれ、約3時間半、通行止めとなった。

 路上にいたのは、埼玉県越谷市の会社役員男性(62)。都内で酒を飲んでタクシーで帰宅したが、間違えて自宅から1キロ以上離れた場所で下車。歩いて帰る途中、疲れて中央分離帯に座り、車道へ足を投げ出して突っ伏して寝ていたのだった。埼玉県警越谷署は3カ月後、男性を道路交通法違反(道路における禁止行為)容疑で書類送検した(その後、不起訴処分)。

 道交法76条は道路での「寝そべり、座り、しゃがみ、立ち止まること」を禁じていて、違反者には5万円以下の罰金。中でも夜間の路上寝は、ドライバーが見つけづらくて重大な事故につながる恐れがある。

 警察庁によると、昨年の路上寝込み等による死亡事故件数は全国で158件。都道府県ごとで見ると、千葉県(16件)と埼玉県(15件)が特に多い。埼玉県は2011年まで4年連続ワースト1位だった。

 なぜこの両県で多いのか。埼玉県警の担当者は、「飲み過ぎる方が多いようだが、はっきりした理由は不明」と言うが、最寄り駅から自宅まで遠い人が多く、途中で休憩することなどが推察される。

AERA 2013年4月8日号