花粉症歴30年以上になる東京都の会社員ミチ子さん(60代)。主な症状は鼻水とくしゃみ。ステイホームの今年は、ステロイドの点鼻薬ですませる予定だが、外出するときだけは飲み薬を使おうと思っている。
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「スーパーや電車の車内でくしゃみが止まらなくなったら、みんなの迷惑になりそう。私も周りにくしゃみを連発している人がいたら嫌です」
同じく花粉症歴20年のマユミさん(40代)を悩ませるのは目の症状。あまりの目の痛さとかゆさで、娘の卒園式を途中で切り上げたほど。
「知らないうちに目頭を押さえたり、かいたりすることがあるんですが、その手にコロナが付いていたら……。とても怖いです」
と話す。2人の心配は、花粉症の人にとっては他人事ではない。
製薬企業が昨年12月に実施したアンケートでは、新型コロナの流行後に人のくしゃみが気になる度合いが増した人は8割にものぼる。
「これまでの花粉症は、かかった当人がつらいだけの、いわゆる“個人の病気”でしたが、コロナ禍になって“社会的な病気”へと変わりました」
と話すのは、花粉症治療の第一人者で、日本医科大学大学院教授(耳鼻咽喉[いんこう]科)の大久保公裕さん。話を続ける。
「新型コロナは、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)で感染します。国民の4割が花粉症ということは、無症状だけれどコロナに感染している花粉症患者もいるはず。そういう人がくしゃみを連発すれば、当然ながらその周囲の人たちの感染リスクを高めてしまいます」
知っておきたいのは、花粉症は自身の感染リスクを高める原因にもなり得るということだ。
新型コロナは、目や鼻の粘膜から入り込んで感染することがわかっている。手で目をこすったり、マスクをずらしてはなをかんだりしたときに、手にウイルスが付いていれば感染する危険性がある。
熱っぽいなどの症状が出たときに、いつもの花粉症の症状、と決めつけることも要注意だ。