水原:格差は海外に行くとより突きつけられるかな。ファッションの世界にはどうしても階級みたいなものがある。多様性の時代だ、と言われて「やっとアジア系にもチャンスが!」と思っても、実際に現場に行くと全然歩み寄る雰囲気がない。泣いたこともあったけど、もはや「まあ、いっか」。
門脇:日本にもいろいろあるよね。例えばいまだに親が結婚相手の育ちを気にする、とか。
水原:あるある。
門脇:この映画は女性の生きにくさだけじゃなく、男性の生きにくさも描いている。生まれる場所は誰も選べないけど、自分をその状況に縛っているのは自分自身でもある。美紀も華子も幸一郎も「自分はこうあるべきだ」とどこかで自分を縛っていた。そんな彼らが出会うことで、自分を縛っているものから、少しずつ解放されていく物語だと思っている。
水原:相手を完全に理解できなくても、どれだけ歩み寄って共存するかが大事だよね。ここ数年で#MeToo含め、いろんな声があがるようになって、私自身もSNSで発信してきたりもしたけれど、いまはどうすれば共存できるのかを考えるようになった。すべてに関わることはできないし、人を力ずくで変えることもできない。なにごとも「ケセラセラ(なるようになる)」。そしてなるべく共存スタイルでいこう、って。
門脇:すごくよくわかる。それに最近、いい意味で自分を許すことも大事だと思っている。努力をしないのとは違うけど「いまはここまでしかできないので、すみません!」って。そうやって自分を縛っていたものを外して、「いいよ、いまの自分で」って思うと、楽になれる。
水原:本当にそう。いまある自分がすべてだし、人生は1回きり。自分の好きなものや興味のあることにフォーカスして、それを追求し続けたり、感じたことに正直でいたいよね。
門脇:ケセラセラ!だね。
(構成/フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2021年2月15日号