舌側矯正は特別な装置と技術が必要なため、表側矯正よりも治療費が高くなる。医療機関や歯の状態によっても異なるが、表側矯正が80万~120万円程度なのに対し、舌側矯正は120万~150万円程度だ。

 歯周病自体が、歯並びを悪くさせることもある。

 30代の女性は、もともと歯並びはいいほうだった。だが、2年ほど前から歯並びの乱れが気になるようになり矯正歯科を受診したところ、「歯周病が悪化している。まずその治療を」と言われ、歯周病専門医を紹介された。すると、歯周病が原因で歯並びが悪くなっていたことがわかった。女性を診療した二階堂歯科医院の二階堂雅彦さんはこう話す。

「歯周病が進行した患者さんの歯並びが変わるケースは少なくありません。進行した場合は矯正治療を行わないと歯を本来の位置に戻すことはできません。歯槽骨が大きく溶けてしまっているようなケースでは、矯正治療ができないこともあります。また、矯正治療中も歯周病のケアは不可欠です」

 幸い、女性の場合は1年ほどかけて歯周ポケットの清掃や骨の再生治療といった歯周病の治療を行って改善したため、矯正治療に入ることができた。

 歯科矯正治療は長丁場だ。ブラケットの装着は2~3年。歯並びが整ったあとも、後戻りを防ぐため、マウスピースなどのリテーナー(保定装置)を2~5年装着する必要がある。

 前出の大坪さんは、矯正治療を開始する前に、歯科衛生士によるクリーニング(プロフェッショナルケア)を受け、正しい歯磨きの仕方を習っておくことが大切だと強調する。

「矯正治療が終わっても、加齢とともにかみ合わせや歯の状態、口の中の環境は変わっていきます。変化に合わせてケアを続けていくことが大切です」

(ライター・谷わこ)

AERA 2021年2月22日号