平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
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左から東洋大の椛愛理マネジャー、岡田真祐子コーチ、脇本茉耶トレーナー(T.S Serve Trainer Team)
左から東洋大の椛愛理マネジャー、岡田真祐子コーチ、脇本茉耶トレーナー(T.S Serve Trainer Team)

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第57回は、「マネジャーの役割」について。

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 五輪金メダルを取るためには多くの人の協力が必要です。トレーナー、泳法分析の専門家、医療スタッフ……。支援者の力が結集することで大きな壁を乗り越えられます。日常の練習では選手に近いマネジャーの役割がとても重要です。

 大学水泳部でいえば強くて、いい成績を出すチームには学生の名マネジャーがいて、明確に選手に指示を出しています。信頼されているマネジャーは大会のプールサイドのふるまいからもわかります。裏方としてチーム運営にかかわると組織全体を見ることになります。日本水泳連盟の青木剛会長、上野広治副会長も学生時代に水泳部のマネジャーを経験しています。

 私は大学2年のシーズンを終えて選手からマネジャーになり、監督のもとで練習メニューを作るようになりました。プールから上がると見える風景が変わってきます。一緒に泳いでいたときには意識していなかった、それぞれの選手の個性や練習への取り組み方の違いがわかってきました。

 当時の早大水泳部の選手は男子だけ。競泳、水球、飛び込みの3部門が一つの寮で暮らしていました。私が在籍中、水球で学年が三つ上と一つ上、競泳で一つ下の計3人の女子マネジャーがいました。自宅からの通いで早朝練習にも必ず参加して、いま振り返っても献身的にチームを支えてくれたなあと思います。

 私が指導する東洋大水泳部でもマネジャーが練習をもり立てています。記録を計ったり集計したり道具の準備をしたり、よく動いてくれます。声を出して選手を励まし、コーチとのパイプ役も務めてくれます。

 就活をしている3年生のマネジャー、菊地未来に先日、こんな話をしました。

「マネジャーの仕事というのは自分よりも人のためにやっている。人のために働いたり尽くしたりすることに幸せを感じる部分があるわけで、どういう就職先に進んでも頑張れる素養はあるんじゃないかなあ」

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