近年、PM2.5による健康影響が明らかになってきています。例えば、デンマークのGitte氏らの報告によると、1997~2014年に生まれたデンマークの小児約320万人を調べたところ、高レベルのPM 2.5に曝露(ばくろ)された子どもは、曝露されていない子どもよりも喘息と持続性喘鳴を発症する可能性が高いことを示唆していることがわかりました。長期的なPM2.5の曝露による脳卒中リスク上昇や心血管疾患による入院リスク上昇の関連が報告されている他、PM2.5の濃度上昇と全死亡率、心血管疾患による死亡率、呼吸器疾患による死亡率の上昇の関連も指摘されています。
さらに、花粉が破裂する現象も報告されています。黄砂やPM2.5が花粉に接触すると花粉表面が傷つき亀裂が入ります。その亀裂から水分などを取り込む結果、内側から膨張し破裂してしまうのです。花粉のアレルゲン物質が細かくなった結果、鼻や喉を通り抜けることができるようになり、気管支や肺まで到達して喘息の原因にもなってしまうことが指摘されているのです。
新型コロナウイルス対策として季節を問わず着用するようになったマスクに加え、空気清浄機の設置や、PM2.5の分布予測などを確認し飛来が多い日は外出を控えるなど、花粉症でない方も、ぜひ日々の対策をしてお過ごしくださいね。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員