日本人の国民病の一つと言っても過言ではない花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となり、くしゃみや鼻水や鼻づまり、目のかゆみといったアレルギー症状を引き起こす病気です。とてもつらい症状ですが、実は目や鼻から入ってきた花粉をからだの中に入れないようにするための防衛策であり、鼻水や涙で花粉を洗い流し、くしゃみで花粉を吹き飛ばしているというわけなのです。

 2008年に全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした調査によると、花粉症全体の有病率は29. 8%、スギ花粉症の有病率は26. 5%でした。2016年度に東京都が実施した「花粉症患者実態調査」によると、都内のスギ花粉症の推定有病率(軽症な方も含む)は48.8%であり、どの年齢層においても2006年度の調査よりもスギ花粉症の推定有病率が上昇していたことがわかっています。スギ人工林の面積割合が相対的に低い北海道や沖縄県では花粉症の有病率が低いことも過去の研究により報告されており、スギ花粉の飛散量に起因した花粉症の有病率の地域差があるのではないかと推測されています。

 近年の花粉症の患者数増加には、飛散する花粉数の増加の他、生活習慣の欧米化、腸内細菌の変化、大気汚染や喫煙が影響していると考えられています。また、症状を悪化させる可能性があるものとして、空気中の大気汚染や春先の黄砂が指摘されています。

 黄砂とは、中国大陸内陸部のゴビ砂漠や黄土高原、タクラマカン砂漠から風によって巻き上げられた土壌や鉱物粒子が偏西風に乗って日本に飛来し、大気中に浮遊あるいは降下する現象をいいます。黄砂が日本に飛んでくるのは、主に2月から5月です。黄砂粒子から大気汚染物質も検出されていることから、これらの有害な物質を取り込んで日本までやってきていることが示唆されているのです。

 一方、PM2.5は大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことです。PM2.5の発生源は、人為起源のもの(ボイラーや焼却炉などのばい煙、粉じん、排気ガスなど)と自然起源のもの(土壌、火山灰など)があり、それに加えて排出された化合物や大気汚染物質が大気中で化学反応によって二次的に生成されたものを含め、さまざまな粒子が混合された微小粒子がPM2.5と呼ばれています。大気汚染防止法に基づく自動車排気ガス規制などにより年間の平均的なPM2.5濃度は減少傾向にあるものの、国内での発生に加え、海を超えた越境汚染によってPM2.5は日本国内で1年中計測されています。

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PM2.5による健康影響が明らかに