ヤマザキマリ:漫画家、随筆家。1967年、東京都生まれ。コロナ禍前まではイタリア在住。著作に『国境のない生き方』など(撮影/写真部・加藤夏子)/池上彰(いけがみ・あきら):ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。著書に『なんのために学ぶのか』『池上彰の世界を知る学校』など(撮影/岸本絢)
ヤマザキマリ:漫画家、随筆家。1967年、東京都生まれ。コロナ禍前まではイタリア在住。著作に『国境のない生き方』など(撮影/写真部・加藤夏子)/池上彰(いけがみ・あきら):ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。著書に『なんのために学ぶのか』『池上彰の世界を知る学校』など(撮影/岸本絢)
AERA 2021年3月1日号より
AERA 2021年3月1日号より
AERA 2021年3月1日号より
AERA 2021年3月1日号より

 森喜朗氏の女性蔑視発言の中で、注目を集めた「わきまえる」という言葉。コロナ禍での「自粛警察」にも通ずる。そうした風潮を打破するために今、求められることとは。AERA 2021年3月1日号で、池上彰さんとヤマザキマリさんが語り合った。

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池上彰:非常に身につまされたのはオリンピックの組織委員会の方々は皆さん、「わきまえておられる」んですよね。ツイッターでは「わきまえない女」っていうハッシュタグもついたりしましたけど、あの「わきまえておられる」っていうのが実に日本的です。

 私も含めて男たちって、会議の終わりの時間が近づいてきて、話が長くなっちゃいけないからこのへんで早く終えようという時に、言いたいことがあっても黙ってさっさと終わらせようっていうところがあると思うんです。そういうのをわきまえるって言われてしまうのかなと。わきまえちゃいけないんだなって、身につまされたんです。

ヤマザキマリ:わきまえるという言葉はなかなか難しいですね。人々全体の価値観が統一しないとうまく稼働しないでしょう。イタリア人の場合、少なくとも私の周りの人は誰もわきまえてないですから(笑)。欧米は思ったことを言わないと潰されてしまう社会ですから、黙っていても始まらない。わきまえるという感覚には、あ・うんで理解するみたいなことに近いものがあるじゃないですか。

池上:そうですね。

ヤマザキ:私はイタリア暮らしが長いこともあって、思ったことは全部吐露してしまう傾向があります。一応根本的には日本人ですから、場合によってはわきまえる気持ちは稼働させますが、でもやっぱりこれはおかしいとなればそれに対して、きちんと意思表示はしないと体内に毒素をため込むようで気持ちが悪い。私以外にもそういう日本人の友人はいますし、そういう人は決して少なくないと思うんです。まあそれでこの社会でやっていくにはなかなか難しい部分もありますね。でしゃばりは世界中にいるけど、日本はちょっと声をあげただけでそういう捉えられ方をしてしまう。まさにわきまえてない迷惑な人として。

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