北朝鮮の弾道ミサイル発射問題に関して、作家の室井佑月氏はこう語る。

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 このところニュースを見ていると、急におでんが食べたくなる。おでんの季節はそろそろ終わりだけど。あたしは近所のコンビニエンスストアまでひとっ走りして、おでんを買ってくる。そうね、具は大根とはんぺんとこんにゃくであることが多いかしら。

 ま、そんなことはどうでもいい。

 なぜ、おでんが食べたくなるか。たぶん、連日連夜、何日も北朝鮮のミサイル問題をテレビでしつこくやっているからだ。あたしはそれを見ると、なぜか芸人さんのおでん芸(っていうのかしら?)を思い出す。

 ほら、みんなで、「あ、おでんがある」「いい具合に味が染み込んでますよ」「おでん好きでしょ」。そんな風に煽って、一人の芸人さんにおでんを食べさせるやつ。おでんを食べた芸人さんは、おでんが熱くて慌てる。その慌てっぷりが面白い。

 それにしても、なぜ北朝鮮問題とおでん芸が結びつくのか。自分でも謎だった。

 ようやく、「ああ、そういうことね」とわかったのは、「日刊ゲンダイ」4月13日付の一面を読んだからだ。『この1週間、テレビは朝から晩まで北朝鮮問題で大騒ぎだ。(中略)官房長官会見でも質問は北朝鮮のことばかり。地上型迎撃ミサイル「PAC3」が配備された防衛省の前にはメディアの報道車両が並び、どのチャンネルに合わせても、小野寺防衛相の視察風景が映される。(中略)報道を見る限り、まるで「戦争前夜」なのだが、もちろん、国民は落ち着いている。AP通信によれば、平壌だって、平穏なのだ。つまり、メディアだけが騒いでいる』。

 そうなんだよ、政府とメディアだけが大騒ぎしている。まるで地デジ放送の時みたい。国をあげての新しい祭りか?

 防衛相のミサイル破壊措置命令も、公表しないといいながらメディアにリーク記事を書かせたりしてさ。日刊ゲンダイの記事では「PRか」と突っ込まれていたぞ。

 北朝鮮は今までにも制裁解除を引き出すため、さんざん挑発行為をしてきた。そのたび、この騒ぎも大きくなっているような。なんだか、大騒ぎされるほど、逆に緊張感がなくなってくる。それってさ、不味いことなんじゃないの。

 ヤバいよ。この国の北朝鮮とのやり取りが、まるでおでん芸のようにあたしには見えてきた。

「あ、ミサイルに燃料注入しましたね」
「燃料を入れると3、4日以内に発射しなきゃいけないんですよ」
「ほら、やるんでしょ」

 で、北朝鮮はやるのかな?うふふ、なんて笑いたくなるのがヤバい。

 北朝鮮が本気でキレたら、日本は被害を受ける。だから、そうならないための万全の備えをしておくのは当たり前。メディアで大騒ぎすること以外に、国としてなんらかの対策を打っているよね、信じていいよね。

週刊朝日 2013年5月3・10日合併号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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