※写真はイメージ(gettyimages)
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AERA 2021年3月1日号より
AERA 2021年3月1日号より

 森喜朗氏の女性蔑視発言が大きな波紋を呼んだが、職場などで実際にそうした言葉を投げかけられたという女性は少なくない。男女平等な社会をつくるためには、差別的な発言に出合ったときの受け答えを考えておく必要もある。女性たちの体験を取材した、AERA 2021年3月1日号の記事を紹介する。

【アンケート】「森発言」的なものは職場にあふれている

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 普段から職場などで抱く違和感の正体は、個人の実力や実績より、「男性」「年長者」など所属や肩書が優先されることだ。コンサルティング業界で働く50代の女性は、かつて働いた外資系メーカーで30代初の女性部長に昇進した際にこう言われた。

「女性だし、若いから本来なら順番が違うのだが」

 この会社はダイバーシティーを打ち出していた。そんな会社でさえ順番が問題になるのかと暗澹たる思いだったという。

 千葉県在住の20代学生は、就職活動で、「入社年次関係なく、自分の考えを述べる機会があり、受け入れる体制が整っている会社を希望している」と伝えたところ、「その会社が続いてきたのにはそれだけのノウハウと経験があるわけだから、それにまず従ってみるべき。最初のうちは学ぼうとする姿勢がないとだめだ」と言われた。

「発言するのに若いか古株かは問題でしょうか。ディスカッションは、お互いの意見をシェアし受け入れることが大事だと考えています。そこに、入社して何年目かという価値基準が設けられるような会議や話し合いの場なのであれば、最初から若い社員は抜きでやればいいのに」

 スウェーデンのヨーテボリ大学で公衆衛生を学ぶ大学院生の福田和子さんは普段から「#なんでないのプロジェクト」の代表として、避妊や性教育の問題に取り組むが、ここでもジェンダーギャップを感じている。厚生労働省の検討会を傍聴すると、男性ばかりのメンバーの中に女性は1人で、女性の切実さが伝わらない。政策提言をしても男性議員は興味を持たない。

「女性が意思決定の場に少ないなど、構造的なジェンダーギャップが問題解決の妨げになっていると感じています」

 ブランド戦略立案を専門とし、女性のエンパワーメントにも取り組んできたブランドストラテジストの大橋久美子さんは、今回の森氏の発言が引き起こした一連の流れを、ダイバーシティーに対する意識変革の機会だとみる。

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