ANA(全日本空輸)在職中にカフェをオープン。14年から定年退職までの2年間は、再雇用で週3日勤務の後、木曜日にコーヒー豆を焙煎した。金土日曜日の営業はこのころから。そんな奥野さんがたどり着いたおいしいコーヒーの基本。それはとてもシンプルだ。
「お湯の温度と量、コーヒー豆の量を正確にはかって、ゆっくりと丁寧にいれること」
店では挽きたての豆を使う。1人分の基準はお湯220ミリリットルに豆16.5グラム。2人分なら300ミリリットルに24グラム。お湯の温度は豆の種類によって異なるが、平均で86.5度という。自宅でいれる場合は、沸騰したお湯をカップに注ぎポットに移せば、それだけで15度近く下がるという。
ドリッパーに粉をセットしたら、中央に500円玉大の円を描くようにお湯をゆっくり注ぎ、30秒ほど蒸らす。100ミリリットルぐらい注ぐと、中央の部分と外側の色が違って目のように見える。奥野さんはこの状態を「ブラウンアイ」と呼び、抽出がうまくいっている手ごたえを感じるという。
とにかく焦らず、じっくりと。短気は損気。丁寧にいれることでコーヒーの味わいは変わる。
もうひとつ、豆選びも重要だ。スペシャリティーコーヒー(栽培者も明確な高品質の豆)を使いたい。都度買いをして、常に新鮮なものでいれるのが良い。「sunday zoo」では自家焙煎の豆も販売している。コロナ禍で自宅用にコーヒー豆を購入する人が増えているという。
「在宅時間が増えているから、朝と晩にコーヒーをいれて、ゆったりとした時間を作れたらいいですね」(奥野さん)
清澄白河をコーヒーの街として有名にしたブルーボトルコーヒーの創業者は「空は青く、広く抜けている。近くに緑あふれる自然があり、私たちの拠点オークランドと似ている」と、この地を選んだ理由を語っている。
ブルーボトルコーヒーのコンセプトは「SEED TO CUP(豆からカップへ)」。焙煎やいれ方だけでなく、産地や生産者にもこだわる。その一杯ができるまでのストーリーを感じながら味わうコーヒーは奥深い。