チャートでは、心室頻拍の発作を起こした患者のケースをたどっている。まずは、植え込み型デバイスの治療をすべきかどうか、すべきならどのデバイスを植え込むべきかを決める。近畿大学病院の栗田隆志医師はこう話す。

「今後、生命に危険が及ぶような頻脈発作(突然死)の危険性を考慮し、デバイスの適応を検討します。植え込みが必要な場合、心不全の有無などによってデバイスを決めます。頻拍による突然死の恐れのみを持っている患者さんと、それに加えて心臓ポンプ機能の低下(心不全)にも対応しなければならない患者さんがいるからです」

 心不全がある場合、心臓の拍動のずれを整える機能のあるCRT-Dを検討する。今回は心不全がないケースを見ていこう。

■リード線は経年劣化する抜去も意識して

 ICDは本体とリード線からできており、本体を心臓近くの胸部に植え込み、静脈を通してリード線を心臓のなかに入れる。頻脈や徐脈の発作が生じた場合は自動的にリード線を通じて心臓へ電気信号(ペーシング)や電気ショックを与える。ペーシングで頻拍が止まれば痛みを感じることはない。

 S−ICDは、ICD同様に体内へ本体を植え込むが、リード線は皮下に入れる。ICD同様、心臓へ電気ショックを与える。ただし、ICDに備わっているペーシング機能がない。

 リード線は経年とともに断線や感染などのトラブルが生じることがあり、その場合に必要なデバイス抜去は、特別な技術を持つ限られた医師のもとでしか受けられない。S−ICDは皮下にリード線があるため抜去が平易なのがメリットだ。特に若い人は長期間デバイスを使用し続けるため、抜去の可能性を考慮してS−ICDの植え込みを検討するケースが増えている。

 チャートに示したケースでは、生活の質を考え、ペーシング機能のあるICDを選択した。

 植え込み型デバイス治療は、日本不整脈心電学会の定める症例数や専門医数、心臓外科の併設などの条件を満たした病院でのみ実施できる。千葉大学病院の近藤祐介医師はこう話す。

「患者さんはデバイスとともに生活していきます。不必要な電気ショックができるだけ起こらないようにして患者さんの生活の質を保つために、デバイスの治療プログラムを細かく修正していくことも大切です」

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