一向に進展を見せない、日本の「選択的夫婦別姓」導入への動き。結婚を機に妻の姓に改姓し、現在は「選択的夫婦別姓」の実現に向けて発信もしている、ソフトウェア会社サイボウズ社長の青野慶久さんは、反対者に向けて「あなたに不利なことは何もありません」とメッセージを送る。AERA 2021年3月22日号で、「選択的夫婦別姓」の現状などを取材した。
【写真】婚姻届には「婚姻後の夫婦の氏」を夫か妻いずれの氏にするか選ぶ欄がある
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政府が5年に1度定める「男女共同参画基本計画」にはこれまで、選択的夫婦別姓制度について「検討を進める」ことが記されてきたが、昨年内閣府が示した第5次基本計画の原案では、「必要な対応を進める」と踏み込んだ。しかし、この一文に対して自民党議員の一部が猛反発。最終的には「夫婦別姓」という言葉自体が削除された。
制度を巡る議論は、これまでも前進と停滞を繰り返してきた。
立法の場では1996年、法制審議会が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申したが、自民党内から「家族の一体感が損なわれる」などと異論が噴出し、法案提出にはいたらなかった。02年には自民党の野田聖子衆院議員らが、また民主党政権時代にも当時法相だった千葉景子氏らが法案提出を目指したものの実現していない。
司法の場では15年、夫婦同姓を定めた民法の規定について、最高裁が10対5の多数意見で「合憲」の判断を下している。ただし、判決では「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」として、いわば国会に「宿題」を出した形となった。
そしていま、別の裁判も進む。前出の青野さんらは2018年、主に戸籍法の規定を問題視して提訴した。戸籍法では現在、「日本人同士」の結婚と離婚、「日本人と外国人」の結婚と離婚の4パターンのうち、日本人同士の結婚のみ、戸籍上の姓を別姓にすることができない。この規定が法の下の平等に反するとの訴えだ。
また、都内の同性婚の夫婦らが訴えた裁判の上告審では、裁判官全員が参加する大法廷で審理することが決まった。棚村教授が言う。