コロナ禍で対面での営業活動からオンライン化したとはいえ、どうもうまくいかない。そんなモヤモヤをAIによる会話解析ツールを使って解消しようという動きが広がっている。AERA 2021年3月22日号は、オンライン商談に必要な会話スキルとは何か探った。
* * *
「当院からの要請を除く面会はお断りさせていただきます」
新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、多くの医療機関ではこうした貼り紙がされるようになった。そこで営業スタイルの大転換を迫られたのがMRと呼ばれる製薬会社の営業担当者たちだ。MRは従来、病院を訪問し医師の空き時間を待って医薬品の効能や安全性を説明してきたが、一斉にオンライン営業へのシフトを迫られた。
医師の元には当然、各社MRからのメールが殺到する。さらに医師の情報収集もネット中心になった。ある大手製薬会社の担当者はこう話す。
「膨大な情報の中でいかに自社に目を留めてもらい、面談したいと思って頂けるか。そして一回の面談でどれだけ納得度の高い情報を提供できるかが、これまで以上に重要になっています」
そこでこの会社では昨年から、コミュニケーションのAI解析技術を持つコグニティと組んで、オンライン営業の理想的な内容・話法を見つけ、MR教育に生かすプロジェクトを開始した。
■資格割って入ることを躊躇
コグニティは同社独自のAI「CogStructure(コグストラクチャー)」を使って、会話の構成要素や情報量、質問の回数や種類などをすべて「見える化」する。その上で、成績上位者に共通する「勝ちパターン」を抽出。一人一人の改善ポイントまで提示できるのが強みだ。
製薬会社のプロジェクトでは、対面営業の会話とオンライン営業の会話それぞれ数十人分を、相手方の医師の了解を得た上で録音して解析した。その結果、「わかっていたようでわかっていなかったオンライン面談の特徴が把握できた」という。
例えば、オンラインの場合、医師から細かい疑問点を確認しなくなる傾向が強いことだ。