「芝居がうまくなりたいと思ったことはないです。芝居の世界で、『うまくなったね』って褒め言葉じゃないと思う(笑)。ただ、昔よりは、人のセリフをよく聞くことを心がけているかもしれないです。あ、あと、ちょっとした下心があるとすれば、“演出家を笑わせたい”ですね。今回は、赤堀雅秋さんがそれぞれの役にイメージを持っていると思うんですが、相手のセリフを受けて、その時々で演出家のイメージ以上のことをやりたい。だから稽古で手を抜かない。稽古で全部出す。そういうモチベーションはあるのかもしれないです」

 おもしろい人と出会って、おもしろい作品に出ること──。荒川さんの俳優としての“欲”は、極々シンプルなのだった。

(菊地陽子 構成/長沢明)

荒川良々(あらかわ・よしよし)/1974年生まれ。佐賀県出身。98年から大人計画に参加。2020年Netflixのホラー作品「呪怨:呪いの家」で主人公の小田島泰男をシリアスに演じた。05年の「タイガー&ドラゴン」と19年の「いだてん~東京オリムピック噺~」で落語家役を演じ、20年には「劇場の灯を消すな!本多劇場編」で約30分にわたる講談(作:宮藤官九郎/指導:神田伯山)に初挑戦した。

週刊朝日  2021年3月26日号より抜粋