仕事、家族、将来のこと……。何かを考えずにはいられないのが現代人の習性。しかし忙しすぎる毎日だからこそ、不安な気持ちを棚上げし、心落ち着ける時間をつくりたい。今回は曹洞宗宗務庁監修の自宅でできる坐禅の“イロハ”をお伝えする。
自宅での坐禅の第一歩は、坐る環境をととのえることだ。視界にいろいろなものが入ると集中しにくくなるため、曹洞宗では壁に向かって坐ることにしている。またテレビやラジオの音声、エアコンの風など、五感を刺激するものは避けたい。
次は、姿勢について。
【1】足の組み方
坐蒲(ざふ)をお尻の中心に位置するように置き、深すぎず浅すぎず坐り、足を組む。右足を左のももの上に深くのせ、次に左足を右のももの上にのせる(結跏趺坐=けっかふざ)。難しければ片足のみ(半跏趺坐=はんかふざ)でも可。両膝と尻の3点で上体を支えるのがポイント。無理をせず、自分なりの坐り方を見つける。
【2】手の組み方
組んだ足の上に右手をおき、その上に左手をのせ、両手の親指を自然に合わせる。これは「法界定印(ほっかいじょういん)」と呼ばれ、坐禅を行う際の印となる。組み合わせた手は下腹部につけ、腕と胸の間を離して楽な形に。このとき、両手の親指は力を入れて押しつけたり、離したりしない。
【3】上体の姿勢
背筋をまっすぐにのばし、頭のてっぺんで天井を突き上げるようにしてあごを引く。その後、両肩の力をぬいて、腰にきまりをつける。この際、耳と肩、そして鼻とおへそが垂直になるように気をつける。
【4】口
舌先は軽く上あごの歯の付け根に触れるようにし、口を閉じる。口の中に空気がこもらないようにする。
【5】目
「半眼」といい、見開かず細めず自然に開いた状態にする。視線は約1メートル前方、約45度の角度に落とす。目を閉じると眠くなりやすいので、閉じない。
【6】呼吸
静かに大きく深呼吸を数回(欠気一息=かんきいっそく)。その後、静かにゆっくり、鼻からの呼吸にまかせる。
【7】左右揺振
上体を振り子のように左右へ、初めは大きく、徐々に小さく揺すりながら、左右どちらにも傾かない位置で静止し、坐相をまっすぐに正しく落ち着かせる。
ここまでで坐禅の姿勢がととのったことになる。時間は線香1本が燃え尽きるまでの約40分が基本だが、「5分、10分でも構わない。それより日々坐ることが大切」(宗務庁広報係)とのこと。
和室がない家の中や、膝を痛めて足を組めない場合は、椅子に腰をかけてもいい。ただし浅く坐り、猫背にならないように背筋はまっすぐに。
「椅子の坐禅は、職場で気持ちを落ち着かせたいときなどに手軽にできるのが利点です」(同)
※週刊朝日 2013年5月17日号