室井佑月・作家
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イラスト/小田原ドラゴン
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 作家の室井佑月氏は福島第一原子力発電所事故に対する東京電力の姿勢に憤慨する。

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 3月11日の「福島民友新聞みんゆうNet」によれば、「東京電力は10日、原発事故後に福島第1原発などで行ってきた3月11日の社長訓示について、今年はオンライン形式とし、終了後の報道陣の取材に応じないと公表した。原発事故後、東電の社長が3月11日に本県を訪れず、取材にも応じないのは初めて」。

 その理由は、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けてなんだとか。

 3.11の現地訪問が不要不急の外出といいたいのか? 民間でやってるPCR検査だってある。あたしの友達は、体の悪い年老いた田舎の親に会うために、ちょっとお高いその検査をして定期的に実家に帰っている。

 東電の社長が3月11日に福島に入らず、取材も受けないって、ほんとうにひどい。

 記事によれば、「東電の社長は例年、3月11日に廃炉作業の最前線となる県内の各現場を訪れてきた。震災が起きた午後2時46分に黙とうし、事故の教訓や本県復興に向けた思いを社員に訓示した後、報道陣の取材に応じるのが通例だった」とあった。

 はっきりいって、これっぽっちのことで東電の罪が許されるわけじゃない。しかし、これっぽっちのことをむげにしたとなれば、それは問題にされなくてはならない。

「福島民友新聞みんゆうNet」も最後にこうチクリと書いている。

「東電を巡っては、福島第1原発3号機の地震計を故障したまま放置するなど安全対策を軽視する動きも目立ってきている」

 そういえば、2月13日に起きた福島県沖を震源とする最大震度6強の地震のときも、全国民がハラハラした。最初は問題ないといっていながら、19日になって「以前から配管などに損傷が見られ、破損箇所が拡大した可能性もある」とし、福島第1原発1号機と3号機で格納容器内の水位が数十センチ低下したと発表した。

 3.11に起きたことは、東電の社長以外、みんな忘れられないのだ。事故を起こした原発のせいで、15万人以上が避難生活を強いられ、今でも故郷に戻れていない人は3万5千人以上もいる。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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