放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、日本アカデミー賞で最優秀作品賞などに輝いた映画「ミッドナイトスワン」と最優秀主演男優賞の草なぎ剛さんについて。
【写真】タダモノではない雰囲気…憑依型と評される草なぎ剛さん
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日本アカデミー賞が年々面白くなってきている。昨年の第43回では最優秀作品賞を「新聞記者」が獲得した。最優秀主演男優賞・女優賞ともに「新聞記者」からの獲得。僕も大好きな映画ではあるし、傑作だと言ってる方も本当に多かった。が、なによりその作品の内容を何かと問題視してる人もいただろうから、あの作品が大きな賞を獲得したのは驚いた。個人的な意見になるが、あの作品が獲得したことにより、日本アカデミー賞の位置がなんだか少し変わった気がした。
そして今年の第44回日本アカデミー賞。最優秀主演男優賞を草なぎ剛さんが獲ってくれたら最高にうれしいなと思っていた。このコラムでも書いたが、「ミッドナイトスワン」を見て、心底しびれた。あの役に挑戦したのを見た時に、日本人の俳優でこれを出来る人ってどれだけいるのだろうと思った。
優秀主演男優賞が発表になった時に、5人の候補の中に入っていて驚いた。佐藤浩市さん、小栗旬さん、二宮和也さん、菅田将暉さんに草なぎ剛さん。
ここに選ばれたこともすごいし、授賞式のことを想像した。この5人が一つのテーブルを囲んで座っていることを。いろんな理由で、絶対にそれはないと言っている人もいた。勝手にそう言い切っているのだ。「忖度」という言葉がすっかり普通に使われる言葉になってしまったが、最近、怖いと思うのは、「忖度」というものに対して、「どうせ、忖度してるんでしょ」と忖度は仕方ないというものになってしまっていること。「忖度は許されない」じゃなく「忖度は仕方ない」と思っている人が多いということが。忖度は嫌だけど、仕方ない。見て見ぬフリしてしまうものによりなってしまった気がするのだ。