やがて少女は大人になり、そして……。
「映像が途切れたら、そこで物語の終わりだなとわかる。これまで書いたものは、大変な状況のなかでも光が見えて終わってくれているので、書き手としては救われています」
作品は死の影を感じさせるが、悲愴ではない。
「僕がそうした死生観を持っているからかもしれません。いろいろ経験していくうちに、死んでいることと生きていること、健康と病気の違いがわからなくなってしまいました」
今も未完成の映像が頭の中にたくさんある。
「小説を書きたかったわけではないので今が楽しいとは言い難い。ただ、個人的なことが今は職業になって、多くの人に読んでもらっていることに驚いています」
(瀧井朝世)
※週刊朝日 2023年2月10日号