超低金利の中、金利1%未満でローンを組めれば、支払う利息より控除額のほうが大きくなる。これが逆ザヤ。その差額分は国から“おこづかい”をもらっているようなものだ。会計検査院によると、今やローン利用者の約8割が逆ザヤ状態といい、以前から問題になっていた。それが、とうとう20年末、与党税制改正大綱に「22年度から見直す」と明記されたのだ。
「わかりますか? 『13年』が使える期限までに契約すれば『1%』も使えますが、それを超えると、どんな制度になるのか一気に不透明になってしまうのです」(有田さん)
これは一大事だ。例えば、年0.5%の変動金利で4千万円借りたとしよう。利息は初年度は約20万円だが、減税による控除額は今なら約40万円。差し引き約20万円が“おこづかい”になるが、それがなくなってしまうかもしれないのだ。
大きな金額のローンを組める人ほど影響が大きい。強力な共稼ぎ夫婦、いわゆる“パワーカップル”がペアローンで4千万円ずつ借りてタワーマンションを買う場合、それぞれが住宅ローン減税を使えるため、初年度に「約40万円」の逆ザヤが発生するが、それが不透明になる。
こう聞くと、住宅購入を検討している人はきっと“前のめり”になるだろう。これに冒頭の業者の“あおり”が加われば、なおさらだ。
「駆け込み需要」について、不動産情報会社、東京カンテイの井出武・上席主任研究員は、戸建てとマンションで分けて考えたほうがいいという。
「東京の不動産はどちらも好調ですが、買っている人が明らかに違います。『最後のチャンス』と聞いて心が動く人は、戸建てを検討するビジネスパーソンの方が多いのではないでしょうか」
その理由は、ひとえに「価格」なのだという。
「戸建てなら、23区内でも4千万円程度で買える新築一戸建てがいっぱいあります。30代はもとより、場所さえ選ばなければ20代でも買える値段です」(井出上席主任研究員)
確かに戸建て市場は“絶好調”のようだ。住宅コンサルティング会社、ネクスト・アイズの小野信一社長によると、20年春の1回目の緊急事態宣言でいったん落ち込んだが、宣言の最中から成約が増えていったという。