新型コロナウイルス下で、東京の不動産市場の活況が続いているが、秋にかけてさらに盛り上がる可能性があるという。カギは「住宅ローン減税」の制度改正。今を逃すと“うまみ”が消えてしまいかねず、“駆け込み”が発生するというのだ。
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「住宅ローン減税率1%のラストチャンス!?」「最大控除額500万円以上!!」──。
都内の住宅展示場のチラシに派手な活字が躍る。住宅関係者が言う。
「早くも始まった感じです。これから、どんどん動きが強まるでしょうね」
いったい、何のことか。
「『ラストチャンス』とあるように、住宅ローン減税の制度が変わってしまいそうなのです。それで『今買わないと損』を売り文句に、業者があおり始めているのです」
順を追って見ていこう。
住宅ローン減税は、ローンを組んで戸建てやマンションを買うと、税金が戻ってくる制度だ。最近はずっと、「10年間、年末のローン残高の1%(現在は年40万円が限度)が税額控除」が基本だった。
始まりは1年半前の消費増税にさかのぼる。消費の落ち込みを防ごうと国は2019年10月以降、控除期間を10年から13年に延ばした。20年中の入居が条件の“時限措置”だったが、新型コロナの感染拡大を受けて、21年中までの入居に期限が延ばされた。
だが、新型コロナは一向に収束せず、20年末には、さらに1年期限を延長することを決めた。
ただし、条件がある。「注文住宅(戸建て)は21年9月末まで、分譲(マンションなど)は同11月末までに契約すること」。つまり、それまでに契約しないと「13年」の恩恵はない。追加された3年間は減税の基準が変わるが、それでも「最大80万円」が戻ってくる。
「それだけでも大きいのですが、20年末にもう一つ、要因が増えました」
こう話すのは、住まいのお金相談専門のファイナンシャルプランナー(FP)、有田美津子さんだ。
「1%の控除率が怪しくなってきたんです。『逆ザヤ』解消の方針が打ち出されたからです」