長岡武司さん(左)と澤口珠子さん。中央は長女(写真=本人提供)
長岡武司さん(左)と澤口珠子さん。中央は長女(写真=本人提供)
この記事の写真をすべて見る

 東京都在住の長岡武司さん(35)と澤口珠子さん(43)は、2015年に結婚し、19年に離婚した「元夫婦」だ。2人の出会いは、マッチングアプリ。当時、IT系のベンチャーに勤めていた武司さんが、婚活コンサルタントとして活躍する珠子さんをサポートしたことが縁で、出会いから1年もたたずに結婚した。新婚生活も、それはそれは楽しかったというが、結果的に結婚生活は4年しか続かなかった。不思議なのは、別れた今でも2人の仲は決して悪くなさそうなことだ。子どもも共同で養育している。そんな2人はなぜ離婚という選択をしなければならなかったのか。夫と妻、それぞれの立場から、結婚から離婚に至るまでを振り返ってもらった。

【写真】「妻に子を連れて行かれた」と語るノンフィクション作家はこちら

*  *  *

 武司さんが珠子さんと出会ったのは、2015年の春。2人とも仕事でのリサーチを目的にマッチングアプリに登録していたのだが、そこで「運命の出会い」を果たす。「初めて会ったときから、家族みたいな安心感がありました」と、武司さん。「一緒にいて、何の違和感もないことに驚きました」と、珠子さん。熱烈な恋愛感情こそなかったが、おだやかな情愛を感じ合い、2人の仲はトントン拍子に進んだ。

 出会った当時の武司さんは、勤めていた会社を休職していた。大学卒業後、システムコンサルタントとして5年ほど仕事をしてきたが、14年の秋に小さなベンチャー企業に転職。そこが合わずに抑うつ状態となり、しばらく休みを取っていた。

 一方の珠子さんは、婚活コンサルタントとして華やかに活躍していた。
「ひとりで会社を興して、本も何冊も出して、バリバリやっているのに、実は超アナログ人間でパソコンが苦手。そのギャップにグッときて、支えてあげたいなと思ったんです。パソコンは僕の得意分野だし、『ちょうど今、会社を休んでいて時間があるから手伝おうか』と言ったら、『だったら一緒に仕事をしようよ』と誘われました」

 武司さんは会社を辞め、珠子さんのマネジメントに本格的に取り組んだ。メディア露出を多くして、ファンを増やした。ファンマーケティングを展開して、顧客からの信頼を維持するためのアプローチを提案した。仕事は大きく広がった。

次のページ
子どもができてズレが生じた「ビジネス観」