米国では、トランプ大統領(当時)が17年にオピオイド危機として、「公衆衛生上の非常事態宣言」を出す事態に。しかし、その効果については微妙なところだろう。
直近でも、ケンタッキー州で母親が買ったフェンタニルを子どもが誤飲し、死亡したとして、母親が逮捕されたとCNNが今年3月22日に報じている。
フェンタニルの問題は米国だけにとどまらない。ユーロポール(欧州警察機構)も数年前から問題視し、ネット上の闇サイト「ダークウェブ」を使った違法薬物取引などの取り締まりを始めた。20年8月にはフェンタニルなどのオピオイド系の薬物や大量のコカイン、ヘロインなど500キロを押収、逮捕者も米国やドイツ、オランダなど世界各国に点在している。
そして、日本にも、この薬物の名前が出始めている。
筆者が「フェンタニル」を耳にしたのは、今年に入り、都内を拠点としているある”半グレ”の男に、別の薬物についての取材をしている時だった。
この半グレの男はフェンタニルを、「試験的に密輸している」と話した。
男によると、薬物の値段設定は、覚醒剤が1グラム4万円、コカインは同2万円なのに対し、フェンタニルは同1万円という。効き目が強力な割には、他と比べて安い印象だ。
その理由について、男はこう説明する。
「まだどんな薬物か知られていないので、仕入れ値も安い。だから値段は安く設定している」
今後、この薬物が広がりをみせるかどうかについてはこう語った。
「大麻の次にくる(はやる)と思う。ただ、まだ怖い。どんな混ざりモノになっているかわからないから、もし人が死んだりしたら当局も取り締まりに動くだろうし」
当然、フェンタニルは日本でも麻薬指定されており、発覚すれば麻薬及び向精神薬取締法違反である。
筆者はこの情報をもとに、日本で麻薬を取り締まる厚生労働省麻薬取締部、通称「マトリ」の幹部に接触。現状を説明し、話を聞くことができた。