帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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岡本太郎さん(当時79歳) (c)朝日新聞社
岡本太郎さん(当時79歳) (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「岡本太郎さんについて」。

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【爆発!】ポイント
(1)岡本太郎といえば「芸術は爆発だ!」のフレーズ
(2)岡本さんのいう「死の本能」とは「虚空」のこと
(3)「爆発!」とは「攻めの養生」のことだった

 ふとしたことで、岡本太郎さんの本を手にしました。昨年末に出版された『岡本太郎の眼』(角川文庫)という文庫です。

 絵心のない私が岡本さんについて知っていることといえば「芸術は爆発だ!」のフレーズぐらいです。岡本さんがこの言葉を発すると、けっこうインパクトがありました。

 実はそれをいただいた形で『帯津良一の養生は爆発だ!』(ビジネス社)という本を出したことがあるのです。もう17年前になります。アンリ・ベルクソンのいう「生命の躍動」(エラン・ヴィタール)について語った本です。私はこの躍動(爆発)を養生の根幹にすえているのです。

 岡本さんはよく「朝日を浴びるのが大好きだ」ともおっしゃっていました。これはいいことですね。朝日を浴びることによって、脳の前頭前野からセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが分泌されます。岡本さんが朝日を浴びながら、太陽に向かって「芸術は爆発だ!」と叫んでいる姿が目に浮かびました。

 そして今回の本で私の岡本太郎観はさらに大きく膨らみました。第1章に「死ぬことに賭けなければ生は輝かない」という節があるのです。

「私は作品のなかに原色の赤をよく使う。(中略)赤に象徴されるように、『死』と『生』はぶつかりあい、からみあっている。だからこそ生命が燃えあがる」

「そうだ。生きるとは生の本能だけではないのだ。熱く己を愛し、拡張し、己の世界をひろげようとするエロスの衝動。だがその裏には、すべてを拒否し、冷たく黒々とした虚無に還(かえ)っていこうとするタナトスが、強力なアンビヴァランスとして働いている。『死の本能』が私の全人間の底で強烈に引っ張るからこそ、生命の歓喜が燃えあがるのだ」

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